迷える子羊@Carleton College

アメリカのカールトンカレッジに通う人の徒然草。

Politics of Memory in Latin American Literature ~其の二~ 中編

 

Politics of Memory in Latin American Literatureというクラスの紹介の記事。

Phase Ⅱ Read Latin American Literature の中編です。

これまでの記事はこちら。

 

sheepatcarleton.hatenablog.com

 

sheepatcarleton.hatenablog.com

 

sheepatcarleton.hatenablog.com

 

 

 

2."The Little School" Alicia Partony

Dirty War(汚い戦争)の頃、アルゼンチンにあるThe Little Schoolという名の拘置所でのPartonyさんの実体験がつづられています。

彼女は、ある日突然拘置所に連れていかれ、それ以降ずっと目隠しをさせられ日々を過ごすことになります。

他の人も目隠しをさせられ、お互いに話すことは禁じられている中で、

彼女達はひそかにコミュニケーションを交わしたり、自分の生存だけを考えざるを得ない状況下で互いに同情したり、人間らしさを保とうと生きる部分が描かれています。

 

Partonyさんは目隠しをしていましたが、鼻が高かったためか目隠しの隙間から外の世界が見えたので、彼女の作品は事細かに描写されています。

作者自身、冒頭で「どこまでが真実でどこからが想像かはわからない」と言及しています。

見えていようがいまいが、正直ノンフィクションと分類されるジャンルは、どこまでが真実かは定かではありません。人の記憶というのはいつも主観によると私は考えます。

認識できるものが記憶として蓄積され、その認識自体人によって異なるうえ、

蓄積された記憶そのものも時間の経過と共に変化します。

 

そして特徴的なのは、彼女の話はvignette ("a short impressionistic scene that focuses on one moment or character and gives a trenchant impression about that character, an idea, setting, and/or object." from Wikipedia) で構成され、とても断片的です。

 

 

それでも彼女が一つの本として残したのはなぜでしょう。

 

 

 

 

 

私がこの本についてエッセイを書くとき構成について書こうとしたのですが、このvignetteについて一つ言えることは、

この断片さは、彼女の経験を読みやすくするという「目的のため」と私は勝手に思っていたのですが、

実際彼女の記憶が断片的で、vignetteにする以外手法がなかった、「自然の成り行き」だったという風に読み取ることもできます。

 

私が前者のように推測したのは、彼女のこの作品はかなり読者や他のことを考慮して作られていて(後述しますが)、彼女がどうすることもできず自然にこうなった、とは考えにくかったのです。

 

このvignetteという形式を通して、人の記憶がどのように形成されているのか、捉えることができる、と文学の奥深さを学びました。

 

 

 

 

私がかなり意図的だ、と感じた理由について。

 

他の文章やDeath and the Maidenのような本を読む中で、Partonyさんの作品で印象深かったのは、

①彼女の堂々と記憶に対面している点

②滑稽さを加えて読みやすくしている点

の主に2点です。

 

①堂々と記憶に対面

アウシュヴィッツ収容所の生存者が苦労したように、トラウマ体験を自分で捉え直して抱えながら生きるというのは容易ではありません。

しかしPartonyさんは、生存者の声を伝えるため、という強い目的を胸に、迷いを感じさせない記し方で彼女の体験を伝えています。

 

②滑稽さ

彼女の話には滑稽さが織り込まれていて、彼女自身冒頭で、

読者が読み進められるように

と収容所体験の奥深い闇の部分は描かないように、あるいはその闇を和らげられるように描かれています。かなり読者の観点を意識した文章です。

具体的な文章は忘れてしまったのですが、私のエッセイにはこのように書いていました。

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In the chapter “Bread,” the scene when the author played with the ball
made of bread calls attention from the readers because of the weirdness, as people usually eat bread instead of playing.

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こうした2点において、彼女はかなり意図的にこの作品を作っていると私は感じたのです。

 

 

授業では実際にPartonyさんがlectureする動画を見ました。興味のある方はこちらもご覧になってみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=O82G-Fb6HBM

 

 

 

 

もう1作品、あまり言えることがないですが意外にもLittle schoolの話が長くなったので次で其の二は最後です!!